サソリとクモ






 あるところにサソリがいました。
 サソリは、慌てた様子で、足をシャカシャカ、動かしています。
 と、そこにクモがいました。
「おい、お前!」
 サソリは横柄な口調で、クモを呼びました。
 それは毒を持つグモでしたが、サソリの毒には敵いません。
「はい。なんでしょう?」
「俺は、お前より強い毒をもっているよな」
「はい。もちろんです」
 クモは頷いて、続けました。
「あなた様の毒はθ-サソリ毒、ティティノストキシンと呼ばれる毒を持っています」
 このクモは意外に、博識でした。きちんとした知識を身につけ、それを生かすことで、上手に生きているのです。
「そのティティ……なんとかってヤツは強力なのか?」
「はい。もちろんです。あなた様の毒にかかればどんな生物でも、身体が痺れ死に至るでしょう。ただ遅効性なのが玉にキズです」
「ど、どんな生物も!?」
 サソリはどうしてか、とても驚いた顔をしました。
「はい。もちろんです。ところで、どうしてそんなことを聞くんですか?」
「いや、そのだな、さっき、背中がかゆかったんだ。ハサミや足じゃ届かないから、尻尾でかいかいしていたんだ。そしたら、チクッて……おい、何だか身体が痺れて――」
「…………」


<了>




2005/6/2 初版

・あとがき

 θ-サソリ毒、ティティノストキシンは例のごとく嘘の物質です。
 だいたい遅効性の毒だと狩りとかにはあんまり役に立たないですよね。
 駄目なところばかり目立つ超短編第一弾でした。



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