誰もいない朝









 僕は目を覚ました。目覚めはすっきり。僕はうーん、と伸びをした。
 うん。今日も元気に一日が始まる。
 僕は【お父さん】が作ってくれたベッドから降りた。【お父さん】はとても器用で建築家という立派な仕事をしているらしい。この家も【お父さん】が設計したらしい。
 お店に売っている家具に気に入ったヤツがないと、自分で作ってしまったらしい。
 本当にすごい。
 僕はくるくると回る螺旋階段をおりて一階に向かった。
 【お母さん】の趣味である観葉植物の鉢が綺麗に並んでいる。僕はこの前、間違って一つ割ってしまった。【お母さん】はすごく悲しそうな顔をしていた。僕は【お父さん】にちょっぴり怒られた。ちょっぴりだったのは僕が反省しているのが伝わったからだと思う。
 もう【お母さん】を悲しませたくない。僕は植木鉢に気をつけて慎重に階段をおりていく。
 リビングについた。あれあれ? 誰もいないぞ。いつもだったら【お父さん】が新聞を読んでいるはずなのに。
 リビングとダイニングは繋がっている。僕はダイニングに向かった。
 そこにも誰もいなかった。いつもだったら【お母さん】が料理を作っているはずだ。
 僕は壁にかけてある時計を見た。短い針が「Z」をちょっと過ぎたあたりを指している。うーん、いつも僕が起きる時間だよね。
 僕のことを寝ぼすけとか言うくせに、もしかしてまだ寝ているんじゃないかな。たまにはそういうこともあるだろう。僕は【お母さん】と【お父さん】の寝室に向かった。
 なんとかドアを開いた僕は目をしぱたかせた。そこにも誰もいなかった。
 僕はちょっと不安になってきた。そうだ、【お姉ちゃん】は? 僕のことをいつもからかっていじわるするけど、本当は優しい【お姉ちゃん】
 まだ寝ているのかな? 僕は隣の部屋のドアの前に立った。ドアノブにうまく引っ掛けて、体重を前にかける。開いた。開いてしまった。【お姉ちゃん】が部屋にいるなら鍵は閉まっているはずだ。
 僕は恐る恐る中を見た。
 期待は裏切られ、やはり誰もいなかった。
 僕は家中を駆けずり回った。みんなどこに消えてしまったんだ。
 【お父さん】!
 【お母さん】!
 【お姉ちゃん】!
 二階トイレ、一階へ、和室は入れない。脱衣所を覗いた誰もいない。
 不安ばかり膨らんでいく。僕は二階にもう一度二階を確かめようと階段を登った。
 そのときガチャリと玄関が開く音がした。
 そして、
「ただいまー」
 という、【お姉ちゃん】の声。
 僕は一目散に玄関に向かった。







 今日は朝の5時から町内のゴミ清掃とかいうのに参加してきた。なにもそんな朝早くからやらなくてもいいと思う。老人の朝が早いというのは本当だ。この地区には老人が多い。
 うー眠い。二度寝しちゃおうかな。わたしは欠伸をしながら、玄関を開いた。
「ただいまー」
 するとスタタタタと二階から降りてくる足音が聞こえた。
「ワンワン」と鳴きながら突進してくる。
 わたしは膝を折って、もう一人の家族を拾い抱いた。
「きゃっ、くすぐったいよ」
 ぺろぺろとわたしの顔を舐めてる愛犬をそっと撫でた。



<了>





2005/7/7 初版

・あとがき

 実家には犬がいます。外でワンワン元気に吠えています。
 自分が久しぶりに実家に帰ると、まるで敵が来たかのように吠えたてます。どうやら素敵に忘れているようです。
 ビーフジャーキーを手にして近づくと一転、しっぽをフリフリして愛想を振りまきます。まったく現金な奴です。
 誰に似たんでしょうか。少なくとも自分ではないことは確かです。





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