バタン。スタスタ。ストン。
「もうすぐ会議が始りますよ。ギリギリですね」
「遅刻しなくてよかったですよ」
「シッ。静かに」
シーン。
「それでは、第七百二十八回。擬音決定会議を始めます」
パチ……パチ……パチ。
「それでは本日の議題“パンツを穿き替えたときの清々しい気持ちを表す擬音”について討論をお願いします。それでは……挙手を――ん。速いですね。では、キムラさん」
ガタガタ。ス。
「私は“ズバァーン!!”を推奨します」
「“ズバァーン!!”……ですか? 推奨の根拠を述べてください」
「パンツにこう……足を通しますよね。そして引き上げる。そして股間にフィットした瞬間――“ズバァーン!!”じゃないですか」
ストン。
「なるほど……“ズバァーン!!”に関して何か意見がある方。ああ、サイトウさん、どうぞ」
ガタガタ。ス。
「“ズバァーン!!”には濁音が二つも含まれています。これでは女性の方が使用を躊躇ってしまう可能性があります。そこ僕は“パパパスゥ”を推したいと思います」
ザワザワ。
「流石に“パパパスゥ”は先鋭的過ぎないかね?」
「は、はぁ……」
ストン。
「だが女性の意見は大事だ。我々だけだとどうしても男性よりの擬音を作成してしまう。世論がそのことについて我々を批判していたことを忘れてしまってはいけない」
ガタガタ。ス。
「“スゥ〜〜〜シンッ”なんてどうでしょうか? “スゥ〜〜〜”の部分でパンツを上げ、“シンッ”の部分でフィットする感じを出しているんですが……」
「発言は私に指名されてからお答えください」
「す、すみません」
「君は新人だから仕方ないかもしれないが、以後気をつけてくれたまえ」
「はい……」
ストン。
「う〜む。“スゥ〜〜〜シンッ”ねぇ。もしかして“新”しいと“シンッ”の部分をかけているなんていうわけじゃないだろうね」
「はい……」
ダンッ!!
「そんなダジャレがこの会議に通用すると思っているのか。恥を知りたまえ! よく考えてみるんだ。全国の皆さんがパンツを穿き替えたときの清々しい感動が“スゥ〜〜〜シンッ”とかいう下らないダジャレの擬音で表現されてしまうんだぞ。もっと真剣に考えなさい」
ガーン……ショボーン。
シーン。
ズーン。
チッチッチッチッチッチッ。
「……いきなり意見がでなくなりましたね。お、ええと君は確か……」
ガタガタ。ス。
「マ、マルヤマです」
「ふむ、そうだったね。ではマルヤマくん。君の案を聞かせてもらおうか」
「案……ってわけではないのですが」
ビクビク。オドオド。
「これからは国際化の時代です。ですからグローバルな視点で考えるのもよいと思うんです」
「なるほど、インターナショナルな擬音を作ろうというわけか。それは良い考えだ。世界中の人々に通用する擬音を作ることができれば、世界中の人々が“パンツを穿き替えたときの清々しい気持ち”を共通に持つことになる。擬音が異文化コミュニケーションの第一歩になるというわけか。素晴らしい! 盲点だったよ」
「きょ、恐縮です」
ストン。
ガタガタ。ス。
「サイトウくん」
「“PUNTUSuuuuuu――!!”なんてどうでしょうか?」
「グローバル化だからといって英語にすればいいという問題ではない。他の国を蔑ろにする気かね。それにそれは叫び声では?」
「…………」
ストン。
ガタガタ。ス。
「マルヤマくん」
「う、“穿下履清々”なんてどうでしょう。中国は世界最大の人口を誇っています」
「駄目だ。万国に共通する擬音が必要だ」
ストン。
ガタガタ。ス。
「君!」
「“ズゥ〜下履Puuuuuuuuuuu”なんていかがでしょうか」
「没。意味不明だ」
ストン。
ガタガタ。ス。
「■■■■■」
「駄目だ」
ストン。
ガタガタ。ス。
「●●●●●」
「それもなんか違う!」
ストン
「最終的に“パンツを穿き替えたときの清々しい気持ち”の擬音は「スゥ〜〜〜、シンッ!!」に決定しました。グローバル化に関しても我が国の誇りを織り込み、日本を強調。なおかつ全世界の人々が違和感なく使用できるはずです」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。
「それでは第七百二十八回。擬音決定会議を終わりにします。皆さんお疲れ様でした」
ガタガタ。
スタスタ。
「いやー素晴らしい擬音ですね。明日から新しいパンツを穿き替えたときは“スゥ〜〜〜、シンッ!!”ですね」
「はっはっは。その通りですな」
ガヤガヤ。スタスタ。
バタン。
「…………最初言ったときは駄目だったのに」
<了>